Justice/Water Of Nazareth(発売中/WARNER)

yuzurusato2006-09-13


ダフト・パンクのマネージャーにしてEd Banger Recordsを主宰しているペドロ・ウィンターの秘蔵っ子であり、ポスト・ダフト・パンクとして現在ヨーロッパを中心に人気爆発中であるフランス出身のユニット、ジャスティス(メンバーはギャスパール・オゥジェとハビエル・デ・ロズネイの2人)のシングルです。ヒットシングル“Water Of Nazareth”とそのリミックスを含む全6曲が収録されています(海外でリリースされたのは2005年になります)。

彼らが注目を集めたのはシミアンをヴォーカルに迎えたニュー・ウェイヴっぽいディスコ・チューン“Never Be Alone”で、この曲が名門International Deejay GigoloのオーナーであるDJヘルの耳にとまり、リリースされたことで大きなヒットを獲得します。ただ、個人的には夜のネオン街を思わせるメロディックなシンセが巧みに使われた『Never Be Alone』は、2004年当時大きな成功を手にしていたMyloと共振するような内容で、ヒットするのも「ああ、分かるなあ」と言った程度の印象に止まっていました。

そうした印象が変わっていくきっかけとなったのがこの“Water Of Nazareth”と彼のリミックス・ワークです。フランツ・フェルディナンドの“The Fallen”やファットボーイ・スリムの“Don't Let The Man Get You Down”などなど、コンプレッサーとディストーションをかけまくり、カットアップを多用した歪みまくりでスッカスカのファットなディスコ・サウンドを披露。ディスコ・パンクならぬポゴ・ハウスとでもいいましょうか、ささくれ立った超過激なサウンドで一気にフロアに火をつけたわけです。今聴くと“Never Be Alone”にもその匂いはほんのりと感じます。

シカゴ・ハウスとヒップホップへの愛情がっちり根っこにあるダフト・パンクに比べ、よりロック色が強いのがジャスティスの持ち味。原曲よりもさらに強烈なセルフ・リミックス。タフなビートと迸るかすれたシンセが印象的な“Let There Be Light”。タテノリのドシャメチャなビートとクラシックのような音階で奏でられるシンセがスリリングな“Carpates”。頭の悪さ全開で突っ走る“Let There Be Light”のDJファンクによるシカゴゲットーなリミックス。原曲にエフェクトを加えつつ、クラッシュシンバルなどの圧縮されてないリズム・ソースも付け加えた、狂気と軽やかさを同居させたようなエロル・アルカンズ(こちらも現在あらゆるジャンルのあらゆるアーティストたちからリミックスの依頼が殺到している人気プロデューサー。今後の動きにも是非注目して下さい)のリミックス。まさにユニットの持ち味が出た先制パンチとしては最適な1枚です。

ダフトとは似ているようで異なるオリジナリティ。例えば『Homework』が好きな方からしたら違和感も出てしまうでしょう。実際そこを指摘してハイプと呼ぶ向きもあるようです。んが、そもそも「ポスト・ダフト・パンク」なんてそんな無理矢理な冠をつける方が間違い。

今最も凶暴なダンス・ミュージックを作るユニット。

このシンプルな形容で十分でしょう。余計な冠を取り去れば、そこにあるのは実に豊潤なる才能を発揮する鬼っ子たちの見目麗しい勇姿。そんな素晴らしい彼らの今を是非体感して下さい。