RYUKYUDISKO/PEEKAN(発売中/platik)

yuzurusato2006-09-06


アンダーグラウンド・シーンのアーティストのインタヴューを積極的に掲載しているジェットセットレコードのHP。そこでMIAのプロデューサーとしても知られ、今最も熱いDJ/プロデューサーとして注目されているディプロが日本のクラブ・シーンに対して次のようなことを言っていました。

「日本はいつになったら琴を使った新しいベース・ミュージックを作り始めるんだい? 早く作ってくれよ!」

これを読んで筆者は「流石バイレ・ファンキを広めたローカルビート大好きっ子、かっこいいなあ」という気持ちを抱くと同時に、なんだかとても悔しい気持ちになったものです。なるほど、確かに日本のクラブ・シーンでいわゆる日本のローカル・ミュージックをダイナミックに活かしたアーティストは少ない。「お前らの国にはこんな面白い音楽が転がってるんだぜ。気づかねーの?」と言われているようなもんじゃありませんか。悔しくないわけがありません。

そういうわけで、筆者にとってRYUKYUDISKOの登場は非常に嬉しいものでした。沖縄の音楽とテクノのチャンプルー。まさにローカルビートを存分に活かした日本のダンス・ミュージックです。そしてそのサウンドの強烈さは昨年のWIRE05でのフロア全員が、踊り方を知らなくても沖縄舞踊のような踊りを自然とはじめたことでもお分かりいただけるでしょう。これがカルチャーとして浸透した音楽の持つ強さなのかもしれません。

さて、前作『RYUKYUDISK O TECH』から約1年半のインターヴァルを経てリリースされたのが今回紹介する『PEEKAN』になります。

今作のテーマは「テクノ」とのこと。確かにビートはビルドアップされ、空間的なシンセやエフェクトも多用されています。“Tropical Beach”はアシッドベースと空間シンセが映える日本流のクロスオーバー・トラックですし“Fingerworks”などミニマル・チューンも増えました。しかし、これは前作にもあったことであり、今作でなによりも大きかったのは音の整理がしっかりなされていて、ビートやサンプリングした三線の音やヴォイス・サンプルがより効果的にダイナミックに響いてくることでしょう。特に“RKD TEKNO”“Uchina Experience”“Fascinating Instruments”“WIRE DENBU”の流れは素晴らしく、聴き手を心地よい世界へとあっという間に連れていくような強力なパワーがあります。

ZAZEN BOYSの“HIMITSU GIRL'S TOP SECRET”をサンプリングした“ZAZEN beats”や“Native Guitar”のまるで真剣で一刀両断するようなド迫力のアタック感。“Naminoue New Wave”の分厚いシンセとメロディアスなシンセの心地よいコントラスト。壮大なブレイクが心地よい“Trans KOZA Express”。バリエーションに富みながらもいずれの楽曲も輪郭がはっきりしており、1曲の主張が強くなっています。

そうすることで、より魅力を増しているのがダウンビートから四つ打ちにリズムがめまぐるしく展開していく“WIRE DENBU”や“Araha Freestyle”のような彼ら独特のせわしないチャンプルーサウンドです。個人的にはこうした沖縄の音楽の要素が強く出ている曲がもっと増えてもいいなと思いました。もちろんアルバムではバランスも大事になってきますが。

ともあれ、ワンアンドオンリーなダンス・ミュージックを聴かせるRYUKYUDISKOは今作で早くも大きな成長と高いセンスを見せつけました。夏にぴったりな楽しい祭りサウンドはもちろんのこと。日本には日本独自のダンス・ミュージックがある。それを確認する上でも本作はとても大きな意味があると思うのです。